ヤマハサウンドシステム株式会社

第二幕 Act8
兵庫県立芸術文化センター
金子 彰宏 様

第二幕 Act8
兵庫県立芸術文化センター
金子 彰宏 様

  • ホーム
  • 幕あい
  • 第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

兵庫県立芸術文化センター 舞台技術部 副部長兼主任舞台芸術技術専門員 金子 彰宏 氏(左)
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 営業課 齊藤 健太(右)

兵庫県立芸術文化センター
舞台技術部 副部長兼主任舞台芸術技術専門員 金子 彰宏 氏(左)
ヤマハサウンドシステム株式会社
営業部 東京営業所 営業課 齊藤 健太(右)


「Intermission(幕あい)」とは、一幕が終わって、次の一幕が始まるまでの間。舞台に幕が下りている間のこと。このシリーズでは、ヤマハサウンドシステムが日頃お世話になっているホール・劇場の世界を牽引するキーマンの方々に、市場のトレンドやヤマハサウンドシステムへの期待などを、その仕事の「Intermission(幕あい)」に語っていただきます。

第二幕 Act8にご登場していただくのは、2005年に開館した「兵庫県立芸術文化センター」に、開館前から携わる舞台技術部 副部長兼主任舞台芸術技術専門員 金子 彰宏 氏です。阪神・淡路大震災からの「心の復興・文化の復興」のシンボルとして常に地域の方々とともにあった「兵庫県立芸術文化センター」の意義や今後の展開などについてお話をうかがいました。

卓が並んでいるPA席を見て「かっこいいな!」と思った

齊藤:最初に、金子さんが音響の世界を目指したきっかけを教えてください。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

兵庫県立芸術文化センター 舞台技術部 副部長兼主任舞台芸術技術専門員 金子 彰宏 氏

金子氏:いつの間にかこの世界にいたという感じでよく覚えていないのですが、振り返ってみると父の影響だったかもしれません。父はクラシック音楽が好きで、若いころ声楽やバイオリンをやっていたそうなのですが、その影響で私も幼少期からバイオリンコンチェルトなどのレコードを聴かされ、自然とクラシック音楽に慣れ親しんでいました。自分でも指揮者のまねごとをしていました。
小学校の頃は猫も杓子もフォークソングの時代で、僕も小学校5年生の時にフォークギターを買って、井上陽水やチューリップのコピーをし、その後バンドも組みました。高校生になると洋楽にハマり、QUEENやTOTOのコンサートに行きました。そのコンサートでは音響や照明がかっこよく見えて、今思えばその頃から何となく演者を支える仕事を意識していたのかもしれません。そして高校3年生で進路をどうしようと迷っていたときに、たまたま友達が持っていた大阪芸大の要項書を見て舞台スタッフの仕事が学べることを知り、一気に「こっちに行く!」と決めました。大阪芸大に入って1回生のとき、4回生の先輩が「劇団☆新感線」を作り、その稽古の音出しを手伝ったりしていました。あの頃はまだカセットテープの時代で、稽古の教室にラジカセを持って行って、頭出ししておいたカセットテープをいっぱい並べて、きっかけがきたらガチャッと再生していました。そうこうしているうちに芝居の世界がどんどん面白くなっていったんです。

齊藤:実際に音響の仕事を始めたのは、いつ頃ですか。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 営業課 齊藤 健太

金子氏:バイトでは舞台音響もやってはいたのですが、東京に行った先輩から「芝居の音響会社で人を探しているけど東京に来るか?」とお声がかかり「行きます」と即答してしまいました。その会社のことは何も知らないのに無謀もいいところですよね。そして卒業間際その先輩に「紹介するから来い」と呼ばれて行ったのが蜷川幸雄さんの「タンゴ・冬の終わりに」という名作の稽古場の仕込みでした。そこからから18年、演劇の音響をたたき込まれました。オフィス新音という会社です。

齊藤:オフィス新音さん時代に「銀座セゾン劇場」の立ち上げに関わられたそうですね。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

金子氏:「銀座セゾン劇場」の立ち上げには会社ぐるみで参加しました。その現場には後に「新国立劇場」の技術部長になられた三田村春夫さんと、小山内秀夫さんがいらっしゃいました。小山内さんは後に「兵庫県立芸術文化センター」の舞台技術部長(後に企画制作アドバイザー)として設計段階から関わるようになり、私は小山内さんに呼ばれる形で2002年に「兵庫県立文化芸術センター」の準備室に来ました。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

兵庫県立芸術文化センター外観 (撮影:飯島隆)

現場で最終的に責任を持つのは技術者
だから計画段階から技術者も関わるのがベスト

齊藤:金子さんが「兵庫県立芸術文化センター」に関わったのは、どの段階からですか。

金子氏:オープンの3年前です。ここが兵庫県の素晴らしいところで、そんなに早い時期に運営スタッフを入れるのは異例中の異例だと思います。運営スタッフは劇場が完成してから呼ばれるのが一般的なので。

齊藤:劇場が完成して機材も入った後に運営スタッフが入り、いざ動かしてみると使い手のことが考えられていなかった、という話はよく耳にします。

金子氏:普通はそのようです。でもここは計画段階から運営スタッフが意見を言えました。たとえば、この中ホールのスピーカーは完全に露出設置です。それはチューニングを自由にできる状態にしておきたかったから。設計当初は意匠的にスピーカーを隠す考え方でした。しかし設計や建築を担当された方々が運営スタッフの意見を聞いてくださり、県の営繕関係の方も「運営スタッフがそう言うんだったら、その方がいいんじゃない?」と後押ししてくださったこともあって使い勝手のいいシステムで構築できました。
これは逆に言うと、運営スタッフは計画段階から関わっている以上、他人のせいにできないわけです。言い訳できませんから、納得のいく形にしたかった。そこでスピーカーの比較検聴、いわゆる「鳴き比べ」を提案し、そこに芸術監督としての就任が決まっていた佐渡裕さんが信頼する音響家である山中洋一さんに立ち会っていただきました。山中さんのジャッジには説得力があるはずですから。山中さんは「中ホールはお芝居に特化した音響にしたい」という僕の意向をくみ取ってくださって「この方向でいいんじゃないか」と言ってくださり、現場スタッフが運営しやすい設計に至りました。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

齊藤:オープン3年前の時点で、すでに劇場としての方向性は出ていたのですか。

金子氏:ありました。当時の公共ホールの多くは大・中・小のホールがあっても、収容人数の違いだけで、中身は似たような作りのホールになっているようでした。
でも「兵庫県立芸術文化センター」は最初から劇場ごとのキャラクターを振り切っていました。大ホールは4面舞台でオペラができる規模でかつ、オーケストラのコンサートを主眼に置いた豊かな響きの劇場。一方で中ホールは演劇中心の催しを想定した劇場。そして小ホールはすり鉢状のユニークな構造を持つ400席の音楽ホール。ここと同じような形状のホールは全国どこにもないでしょうね。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

兵庫県立芸術文化センター 大ホール (撮影:飯島隆)

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

中ホール (撮影:飯島隆)

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

小ホール (撮影:飯島隆)

齊藤:中ホールは演劇用なのだから、音響システムも演劇用として使い勝手のいいシステムにされたのですね。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

金子氏:そうです。当初の中ホールの設計は、大ホールより小さいんだからスピーカーも小さくていいだろうという指向でした。「いやいや、ちょっと待て。ここは演劇用ですよね、それならむしろ大ホールよりデカいスピーカーが必要でしょ」と思ったわけです。それで中ホールの音響を当初の設計から変更していきました。たとえばここにはシーリングスピーカーが4つありますが、それぞれサブウーファーを積んでいます。シーリングだからとりあえず鳴ればいい、ではなく、演劇的にいえば鳴らすんだったらドカーンと出ないと意味がない。しかも天井裏に毎回仕込みに行けないんだから、最初から仕込んでおこう、ということです。

齊藤:そのあたりは、金子さんが計画段階に入ってなかったら、きちんとした演劇向けの音響にはなっていなかったかもしれませんね。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

金子氏:そうかもしれません。一般的なホールや会館では、マイクでしゃべった声を全席にまんべんなく届けるために、1階席はこのスピーカー、2階席はこのスピーカーと言った音響設計をします。でも芝居の場合は、効果音も考えると1階のスピーカーからでも全席に響かせたいし、2階のスピーカーからでも全席に響かせたい。だから大型のスピーカーが必要なんです。ですからある意味でここの中ホールの音響システムは、いわゆる一般的なホールや会館の設計で考えるとナンセンスかもしれません。もちろん最初はドキドキしましたよ。どう評価されるんだろうと。でもこれまでお芝居を何本も上演してきて、それなりにいい評価をいただいているので、方向性としては間違っていなかったのかなと思います。

齊藤:これまでの数ある公演で、特に苦労したものや、印象的なものはありますか。

金子氏:ここでは毎年、夏に大ホールで佐渡裕芸術監督プロデュースオペラをやります。大ホールは2,000人のキャパなので開場時間を45分間に設定しているんですが、夏の暑い盛りに汗をかいた2,000人のお客様が入ってくる。しかもその45分の間、ホールのドアは開けっ放しです。舞台稽古ではエアコンを効かせていますが、本番日のホールでは開場したとたん、ホール内の湿度がドーンと上がる。弦楽器って湿度が上がると全然鳴らなくなってしまうんですよ。でも芸術監督はオペラのオープニングの1音目をドーンと響かせたいと言うわけです。それで毎年いろんな対策をしましたが、なかなかうまく解消できませんでした。そして試行錯誤の末、最終的に効果があったのが2つの方法でした。
1つはルームチューニング機構であるAGS(Acoustic Grove System)をオーケストラピットに置くこと。AGSは通常はレコーディングスタジオやリスニングルームに設置して定在波を減少させ、音を散らすものです。これを10本、オーケストラピットの四隅など、置けるところに置いてみました。これが想像以上に効果があって、ダブついた低音はスッキリし、バイオリンの音は抜けがよくなり、弦の1本1本の音が聴こえるようになりました。
そしてもう1つは、ホールの音の響きを支援するヤマハの「AFC(アクティブフィールドコントロール)」を入れたこと。「AFC」でホールの「鳴り」を良くしたわけです。特に開場してしばらくの間は「AFC」によってホールの残響を補強することで、演奏の冒頭部をきれいに響かせることに成功しました。
実はこの「AFC」はもともと中ホールに導入したものなのですが、この時は大ホールに移設して使ったんです。中ホールは演劇を目的として作られたこともあり響きがとてもデッドです。台詞はとても良く通り生声でも客席最後部までクリアに聴こえるのですが、楽器などの生演奏をした場合は響きがなく、とてもさみしい演奏に聴こえてしまいます。声楽の場合などは歌い手が響きをつけようと頑張ってしまい、喉に負担をかけてしまいそうです。そこで「AFC」を導入してホールトーンを付加することを可能にしました。これは開館3年目に松木哲志さんがデザインされた音楽入りお芝居で持ち込まれた技術に触発されたことがきっかけでした。この公演では芝居中のピアノとチェロの生演奏中にのみ響きを付加していたのですが、初日のカーテンコールで松木さんが「入れてみて!」とおっしゃるのでONすると、いつもはタイトな800人の拍手がふわーっと広がり豊かな響きを持った拍手になったのです。カーテンコールって舞台を観て感動してその感動を出演者に届けたいから拍手で伝えるわけですが、同時に観客同士でも「良かったよね!感動したよね!」と共感したいからでもあると思うんです。であれば拍手が豊かであればあるほど、より感動のレベルが上がるんじゃないかと思い、劇場という場所を提供する我々がそのお手伝いをできるなら積極的に取り入れたいアイテムだと気付いたんです。
導入するときに無理を言ったことがありまして、それはリアルタイムで微調整ができること。もともと数パターンの設定を切り替える仕様になっていたようなのですが、我々が本場中にタイムやレベル、リリースや音質などをコントロールすることができれば演出のアイテムとして取り入れることができますよね。単なるホールトーンの切り替えだけではもったいないですから。

「兵庫県立芸術文化センター」は地域の方々に愛され、
そして支えられる劇場でありたい

齊藤:金子さんをはじめ多くの関係者、スタッフの方々が手塩をかけて磨き上げきた「兵庫県立芸術文化センター」ですが、金子さんとしては、この劇場はどんな劇場だとお考えですか。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

金子氏:一言で言うと、自由度の高い劇場です。この劇場を使うクリエイター、つまり演出家や技術者に対して、劇場側から「それはできません」とは絶対に言いたくない。そのために必要があれば舞台横のカラムスピーカーもバラします。普通の公共ホールだったら、固定設備を外すなんて、まずないでしょう?でも私たちはまた戻せばいいと考えています。プロセニアムのスピーカーだって必要なら外していい。私たちはこの劇場を使うお客様に対して「どう使いたいのですか」から始まって「こういうこともできますよ」とアドバイスができる劇場でありたいし、さらにお客様からの「こんなことできますか?」に対しても基本的にNOは言いません。

齊藤:そのような劇場がクリエイターに寄り添う姿勢は、どこからきているのですか。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

金子氏:かつて自分がホールを使う側の立場だったからだと思います。ツアーで全国を回っている時、よく劇場から「それはできません」と言われて、もどかしい思いをしていました。もちろん仕方がない面もわかります。ただ東京の劇場では凝った演出の公演をやっているのに、地方公演ではそれが簡略化されているのはすごく悔しい。たとえ貸館公演であっても、「兵庫県立芸術文化センター」にくる主催者様がやりたいとおっしゃっていることに私たちが「できません」と言ったら、5000円のチケットが4800円の価値に減るのかもしれない、それはすごく悔しいんですよ。逆に僕らが「できます」と言って協力し、さらに「こんなこともできますよ」と提案したら、5000円のチケットの価値が5200円分になるかもしれない。少なくともこの「兵庫県立芸術文化センター」では東京と同じ演出でお芝居を上演してほしいですし、さらに言えば「兵庫県立芸術文化センターならもっとできるぞ」と言っていただきたいです。

齊藤:聞くところによると「兵庫県立芸術文化センター」には友の会の会員さんがたくさんいて、公演によっては会員だけでチケットが完売してしまうと聞きました。「兵庫県立芸術文化センターの催しは面白い」ということが、近隣の方々に浸透しているということでしょうか。

金子氏:ありがたいことです。お客様の比率としては、西宮市の方がほとんどで、次いで兵庫県内の方、そして他府県の方と広がっていく感じです。まさに近隣の方々に支えられている劇場ですね。ただ、これは劇場(建物としての)だけの力ではなく、芸術監督である佐渡裕氏の功績によるところが大だと思います。佐渡さんが芸術監督に決まった時、まだここは更地でしたが、近隣の商店街を歩いて「今度おらが村に劇場ができるのでよろしく」と盛り上げてくれました。公共事業ってどうしても「お役所が税金を使って建ててる」という印象があるじゃないですか。佐渡さんはオープン前から地元の人と一緒に盛り上げてくれた。だから開館した時、みんながワクワクしながらここにやってきた。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

最初のオペラ「蝶々夫人」を上演した際、佐渡さんが指揮をしていたら客席からみかんの匂いがプーンとしてきたって言っていました。客席でみかんをむきだしちゃったんです。つまりは普段ならオペラなんか見たこともない人たちが「佐渡さんがやるんだったら観てやろうか」と来てくれたということです。

齊藤:大衆演劇や寄席の感覚で集まってくださったんですね。

金子氏:そうなんです。それはとても嬉しいことでした。もちろんオペラ観劇は、ちょっときれいな服を来て出かける特別な日、そういう敷居はあったほうがいい。でも、その敷居は高過ぎない方がいい、というのが佐渡さんの考えです。開館して20年弱経ちますが、今も近隣の方々がオペラに足を運んでくださいます。もうみかんは食べなくなりましたけどね(笑)。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

兵庫県立芸術文化センターのロビーに展示さているオペラ公演の記録

「兵庫県立芸術文化センター」から
世界へ発信するコンテンツを生み出していきたい

齊藤:「兵庫県立芸術文化センター」で開館以来ずっと音響に関わってきた金子さんが、ここで培ってきた音響に対する哲学や、思いなどがありましたらぜひお聞かせください。

金子氏:これは音響に限らない話ですが、テレビやYouTubeなどの動画配信が充実したこの時代にお客様は安くはないチケットを購入し、忙しい中でスケジュールを調整し、開演時間に合わせて遠くから電車に乗って劇場まで足を運んでくださるわけです。お客様がそうまでしてなぜ劇場まで来てくださるのか。それはやはり、その場の空気や瞬間を楽しみたいからだと思います。同じ空間にアーティストがいて、同じ空気、同じ時間を過ごしていることを体験し、さらにそれを多くのお客様同士共有する。そして観客の拍手がアーティストに届いて、会場全体が一体となって盛り上がる。それこそが劇場の魅力だと思います。ですから音響(に限ってことではありませんが)の新しい技術や演出でその時間をより盛り上げることができることであれば、劇場スタッフとしてどんどん試したほうがいいと思ってます。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

齊藤:「兵庫県立芸術文化センター」として今後チャレンジしていきたいことはありますか。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

金子氏:「兵庫県立芸術文化センター」から発信するコンテンツを作りたいですね。ここで生まれて全国を回れるようなもの。オペラを東京や名古屋で公演したことは何度かありますが、演劇レベルのものはまだないので、劇場としてチャレンジしたいです。これだけ世界中からアーティストが来てくれる劇場って、地方では少ないと思うんです。そういう方々に来てもらっているんだから、「兵庫県立芸術文化センター」の名前を世界に知られるようなコンテンツを生み出していきたいと思っています。それと最近話題のイマーシブ・オーディオにも対応できる劇場にしたいと考えています。新しい「AFC」はイマーシブ・オーディオできますよね。3Dリヴァーブもうまく使えたらいいなと思います。公共劇場という立場で音響的に牽引できるようになれたら素敵ですよね。

齊藤:幕あいの読者には音響を目指す若者も多くいます。最後にこれから音響や劇場の仕事を目指す人へのメッセージをお願いします。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

金子氏:僕は大学に教えに行ったりもしているんですけど、学生たちには音響以前に、まずいろいろなことを楽しんで、感じてほしいと言っています。「これ楽しいね」「これ素敵だね」と感じないことには、何も始まらない。楽しいことがあったら、それを味わい、「自分が表現するならどうするか」ということにつなげていく。自分が楽しいと思わないのに、人を楽しませることはできないと思うんです。そのためには、感覚を常に研ぎ澄ませておくことが大切です。だから学生には、最初の授業で、「耳に入っているイヤホン、一回捨てな」と言っています。もちろん、「拾ってもいいけどね」と付け加えて(笑)。人って感覚(五感)で生きていますから、そのうちの一つを塞いでしまうのはもったいないことです。自分が持っている感覚を塞ぐものを全部外して、空気を感じてほしい。それと最近の子たちって、いらん忖度をするんですよね。「これは言っちゃいけない」って勝手に決めつけてる。「これを聞いたら失礼になるんじゃないか」とか。それもやめなって言っています。疑問に思ったらどんどん質問すればいい。若者には「もっとガンガン行けよ!」と言いたいですね。

第二幕 Act8 兵庫県立芸術文化センター 金子 彰宏 様

齊藤:これから業界を担う方たちには、失敗を恐れずにチャレンジしてほしいと私も思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

定期保守点検のご案内

【施設紹介】イベント制作会社・乗り込みスタッフ向け 施設情報を随時募集中!

リースのご案内

10周年

facebook

ヤマハ プロオーディオ

Copyright © 2024 Yamaha Sound Systems Inc. All Rights Reserved.